不可能を可能にする狭所ドローン撮影|マイクロドローン活用における可否判断基準と成功事例
近年、企業のプロモーションビデオや施設紹介において、建物の外観から室内、そして狭い通路までをワンカットで繋ぐような没入感のある映像を目にする機会が増えました。これらは一般的にマイクロドローンと呼ばれる小型のドローンを用いて撮影されています。
しかし、屋内や狭所での撮影を検討する企業担当者様にとって、最も懸念されるのは安全性ではないでしょうか。「壁や設備を傷つけないか」「高価な機器に衝突しないか」「そもそもこの狭さで飛べるのか」。こうした疑問は当然のものです。
この記事では、多くのドローン撮影現場を経てきた視点から、マイクロドローンによる室内・狭所撮影のメカニズム、安全管理の実際、そしてご依頼いただく際の具体的な準備フローについて、事実に基づき詳細に解説します。
マイクロドローンが室内・狭所撮影に変革をもたらした理由
従来の空撮用ドローン(DJI Mavicシリーズ等)は、GPSによる位置制御に頼って飛行しています。しかし、屋内や天井のある場所ではGPS信号が遮断されるため、機体が不安定になりやすく、またプロペラが露出しているため人や物に近づく撮影には不向きでした。
一方で、現在主流となっているマイクロドローン(主にFPVドローンの一種)は、以下の特性により、これまで撮影不可能だった空間を映像化することを可能にしています。
- 完全マニュアル操作による精密飛行 GPSに依存せず、パイロットの技術のみで制御するため、磁気干渉の多い工場内やGPSの届かない地下施設でも安定した飛行が可能です。
- ダクト型プロペラガードの標準装備 プロペラが完全にガード(ダクト)で覆われているため、万が一壁や対象物に接触しても、傷をつけるリスクを極限まで低減しています。
- 小型・軽量な機体設計 手のひらサイズで、重量も約100gから200g程度の機体が主流です。物理的な衝突エネルギーが小さいため、安全性において大きなアドバンテージがあります。

室内撮影に向く案件と向かない案件の判断基準
マイクロドローンは万能ではありません。現場の状況によって向き不向きが明確に分かれます。以下の基準を参考にしてください。
マイクロドローン撮影が効果的なケース(向く案件)
- 工場・倉庫の製造ライン 人の目線では入れない機械の隙間や、ラインの流れに沿った動的な映像が必要な場合。
- オフィス・社屋の紹介 エントランスから執務室、会議室へと連続的に移動し、職場の雰囲気をワンカットで見せたい場合。
- 飲食店・店舗の内観 カウンター越しに厨房に入り、調理の手元から客席へと視点を移動させるような演出。
- 歴史的建造物や博物館 絶対に接触が許されない展示物の間を縫うような、繊細なルート取りが必要な場合。
導入を見送るべき、または別機材を検討すべきケース(向かない案件)
- 極端な静寂が求められる環境 小型とはいえプロペラが高回転するため、掃除機のような甲高い飛行音が発生します。同録(音声同時収録)が必要なインタビュー中の飛行などは、音声処理が難しいため推奨されません。
- 完全な暗闇 ドローンのカメラは光を必要とします。演出上の暗さは問題ありませんが、パイロットが障害物を視認できないレベルの暗所では、照明の追加が必要です。照明を付けたカスタマイズドローンであれば問題ありません。
- 強風が吹き抜ける半屋内 機体が軽量であるため、約5m/sを超えるような強い風が常時吹き抜ける大型の吹き抜け構造などでは、映像がブレる可能性があります。
効果的な飲食店の撮影ケース
徹底された安全対策とリスクマネジメント
企業様が導入を決定する際、最も重視されるのが安全対策です。プロフェッショナルな現場では、以下のような多層的な安全策を講じます。
1. 機体ハードウェアによる保護
前述の通り、プロペラはダクトの中に収められています。これは単なるガードではなく、機体の構造そのものです。壁に軽く触れた程度であれば、機体は弾かれるように飛行を継続するか、その場に落下します。プロペラが直接対象物を切りつけることは、構造上ほぼ起こり得ません。

2. 電波環境の事前調査
FPVドローンは映像転送に電波を使用します。工場やサーバー室など、既存のWi-Fiや無線機器が多数稼働している環境では、電波干渉のリスクがあります。事前に使用周波数帯(5.7GHz帯や2.4GHz帯など)の調整を行い、法的適合性(技適マークの有無、開局申請済み端末の使用)を確認した上で運用します。
3. フライトルートの設計と補助者(スポッター)の配置
パイロットはゴーグルを装着してドローンの視界に没入しているため、機体の周囲全体の状況を目視できません。必ず補助者を配置し、人の立ち入り管理や、パイロットへの状況伝達を行います。
実際の撮影事例(WORKS)
ここでは、実際に狭所空間を活用して撮影した事例をご紹介します。
この事例のように、通常カメラでは設置不可能なアングルや、クレーンやレールを敷くことができない狭い場所でも、マイクロドローンであればスムーズな視点移動を実現できます。特に、本棚や天井配管や什器の隙間を抜ける演出は、視聴者に強いインパクトと空間の広がりを感じさせる効果があります。
野々市市カレード(図書館)の撮影事例はこちらから
撮影に向けた準備チェックリスト
お問い合わせから撮影当日までをスムーズに進めるために、ご依頼者様に事前にご確認いただきたい項目をまとめました。
- 撮影エリアの図面または写真 正確な広さがわからなくても構いません。スマホで撮影した現場の写真や、簡単なフロアマップがあれば、機体の選定と飛行可否の一次判断が可能です。
- 飛行禁止エリアの指定 「この棚には高額な商品がある」「このエリアは機密情報があるため撮影不可」といったNGゾーンを明確にしてください。
- 当日の稼働状況 工場であればラインは動いているか、オフィスであれば社員様は在席しているか。マイクロドローンは人がいる環境でも飛行可能ですが、事前の周知と導線の確保が必要です。
- 空調の状況 極端に強い送風が直接当たる場所がある場合、ルート変更が必要になることがあります。

当日の撮影タイムライン(モデルケース)
約3分程度のプロモーション映像の素材を撮影する場合の、標準的な当日の流れです。
- 09:00 現場入り・機材搬入 機材のセットアップと、電波状況の確認を行います。
- 09:30 ロケハン・ルート確認(重要) パイロットが機体を持たずに徒歩で撮影ルートを歩き、障害物の位置、風の流れ、光の加減を確認します。この「歩きによるシミュレーション」が品質の約8割を決めると言っても過言ではありません。
- 10:30 テストフライト 実際にドローンを飛ばし、映像の映り具合と安全性を最終確認します。クライアント様にもモニターで映像を確認いただき、アングルの微調整を行います。
- 11:00 本番撮影開始 区画ごとに分けて撮影、あるいはワンカット撮影を行います。テイク数は難易度によりますが、1カットにつき約3テイクから5テイク程度重ねることが一般的です。
- 13:00 予備カット撮影・撤収 インサート用の静止画や、別アングルの素材を撮影し、終了となります。

料金に関わる要素と見積もりの考え方
ドローン撮影の費用は、「飛ばす時間」だけでは決まりません。主に以下の要素によって変動します。
- 難易度とリスク 広い体育館を飛ばすのと、高価な美術品が並ぶ狭い通路を飛ばすのでは、パイロットにかかる精神的負荷と必要な安全対策レベルが異なるため、技術料が変動します。
- 拘束時間 撮影そのものは短時間でも、事前のロケハンや安全確認、待機時間を含めた拘束時間で算出されます。
- 使用機材と機体数 万が一のトラブルに備え、業務撮影では必ず予備機を用意します。特殊なカメラ(シネマティックな高画質機など)を使用する場合、機材費が加算されます。
一概にいくらとは言えませんが、安全管理費を含めた適正な価格で提示させていただくことが、結果としてトラブルのない高品質な納品につながります。
よくある質問(FAQ)
Q. 壁や天井にぶつかった場合、傷はつきますか?
A. マイクロドローンは軽量かつダクトガードで保護されているため、壁紙や塗装を大きく損傷させる可能性は極めて低いです。しかし、完全無欠ではありません。万が一の事故に備え、対人・対物賠償責任保険に加入しております。

Q. 撮影中に社員が映り込んでも大丈夫ですか?
A. はい、可能です。むしろ人が働いている様子を縫うように飛ぶことで、臨場感のある映像になります。ただし、ドローンが至近距離(約1m以内など)を通過する場合は、事前にその方への説明と、保護メガネの着用などの安全指示をさせていただく場合があります。
Q. 雨天でも室内なら撮影できますか?
A. 室内であれば雨天でも問題ありません。ただし、窓を開けて屋外へ飛び出すような演出をご希望の場合は、天候の影響を受けます。
室内撮影の可否・安全性を相談する
マイクロドローンによる撮影は、条件さえ整えば、これまで見たことのない視点を提供できる強力なツールです。
「うちのオフィスは狭いから無理だろう」「工場のラインが複雑すぎる」と思われる場所こそ、マイクロドローンの真価が発揮される場所かもしれません。
図面や現場のスマートフォン写真があれば、飛行が可能かどうかの即時判断が可能です。まずは現状の写真をお送りいただき、実現したいイメージをお聞かせください。
▼ 飛行可能かまたは安全性を相談する



