【徹底解剖】ミラノ・コルティナ2026の「FPVドローン放送」革命──世界最高峰の運用体制と、日本で”今すぐ”実現するための現実解
2026年ミラノ・コルティナ冬季オリンピック。この大会は、スポーツ中継の歴史に明確な「境界線」を引きました。
時速100kmを超えるスキーヤーを至近距離で追尾するFPV(一人称視点)ドローンが、もはや実験ではなく放送インフラの中核として本格実装されたからです(SUAS News)。
この記事では、五輪におけるドローン放送の歴史を振り返りつつ、ミラノ大会で採用された「世界標準の運用マニュアル」とも言える具体的な体制を解剖します。そのうえで、日本国内で同等のFPV撮影を実現するために、何が必要で、誰に頼めばいいのか──その現実的な解をお伝えします。

画像出典:DroneWatch Europe「This is what’s behind the spectacular FPV drone shots at the Olympic Winter Games」
1. オリンピック×ドローン放送──10年の進化を3分で振り返る
FPVドローンがいきなり五輪に登場したわけではありません。10年かけて、「静的な空撮」から「動的な演出」、そして「競技映像の一部」へと段階を踏んで進化してきました。
- 2014ソチ冬季大会(導入期)
ドローンが五輪放送に初登場。会場全景を俯瞰する「静的な空撮」が中心でした。
- 2018平昌冬季大会(演出期)
開会式で1,218台のドローンによるライトショーを実施。映像演出ツールとしての可能性が証明されました。
- 2021東京2020大会(転換期)
1,824台のドローンによる地球儀の演出が世界を驚かせました(Olympics.com)。
しかし航空法や重要施設周辺の飛行禁止法の壁があり、競技中継での活用は限定的にとどまりました。
- 2024パリ夏季大会(試験導入)
マウンテンバイクなど一部の競技で、FPVドローンが試験的に導入。
「使えるかもしれない」から「使える」への転換点でした。
- 2026ミラノ・コルティナ冬季大会(構造的統合)
そして今大会。15台以上のFPV専用機が、アルペンスキー、スノーボード、スキージャンプ、ボブスレーなど、ほぼ全ての屋外競技に配備されました。OBS(オリンピック放送機構)はこの映像を「Third Dimension(第3の次元)」と呼んでいます(NewscastStudio)。

2. ミラノ大会の運用体制──「世界標準マニュアル」の中身を解剖する
ここが本記事の核心です。ミラノ大会では、単にドローンを飛ばしているのではなく、放送品質と安全性を両立させるための極めて精緻な分業システムが構築されていました。
① 機体スペック:安全と性能のギリギリのバランス
使用されているのは市販品ではありません。放送専用にカスタム設計された特注機体です(DroneWatch)。
- 重量制限:243g〜250g。 万が一選手に接触しても重大な怪我をさせない軽量設計。
- 空力設計: 「インバーテッド・ブレード(反転翼)」を採用。プロペラを下向きに配置し、時速100km超の高速飛行や急旋回時の安定性を確保。
- 開発元: オランダの「Dutch Drone Gods」などが開発(Design News)。

② 伝送システム:「操縦」と「放送」を完全分離する二重構造
ここが技術的に最も重要なポイントです。1台のドローンに、目的の異なる2つの通信システムを同時搭載しています。
操縦用(パイロットが見る映像) DJI O4 Air Unitなどを使用。遅延わずか15〜40ミリ秒。画質よりも「リアルタイム性」を最優先し、時速100kmでの精密操作を可能にしています。
放送用(テレビに流れる映像) COFDM(直交周波数分割多重方式)伝送システムを使用。HD HDR品質の映像を中継車に送信。遅延は300〜400ミリ秒発生しますが、中継車側で他の800台のカメラと色調・露出を同期させ、シームレスな放送を実現しています(TM Broadcast)。
③ チーム編成:「3人1組」の鉄則
FPV撮影は、決してパイロット1人で成立するものではありません。ミラノ大会では以下の3名体制が標準ユニットとして運用されていました。
- パイロットVRゴーグルを装着し、操縦に没入。スキージャンプ担当には「元スキージャンプ選手」が起用され、選手の加速タイミングや飛型曲線を身体感覚で理解しているからこそ、完璧な追尾が可能になっています
- スポッター(テクニシャン)目視でドローンの位置や周囲の障害物を確認し、パイロットに伝える「安全の要」。
- ディレクター 映像演出の指示を出し、「どんな絵を撮るか」をコントロール。
④ 極寒環境への対策(ロジスティクス)
冬季五輪ならではの運用上の工夫も見逃せません(TM Broadcast)。
- バッテリー管理: 低温下ではバッテリー性能が劇的に低下するため、「選手2名の滑走ごと」にバッテリーを交換。
- サポートキャビン: 各会場に暖房完備の小屋を設置し、機材とクルーを寒さから保護。充電ステーションとしても機能。
- 離脱プロトコル: 電波が届きにくい地点(例:リュージュコースの特定コーナーなど)を事前にマッピングし、追尾を中止して帰還させるルールを徹底。
3. 「日本でやるにはどうすればいいのか?」──2つのハードルと、その乗り越え方
ミラノの映像を見て、「うちの施設でもこういう撮影ができないか」「スポーツイベントでFPVを導入したい」と感じた方も多いはずです。
結論から言えば、日本でも実現可能です。ただし、最大の壁は技術ではなく、「電波法」と「航空法」という2つの法規制にあります。
ハードルA:電波法(海外機材がそのまま使えない問題)
ミラノで使用されたDJI O4 Air Unit(5.8GHz帯)や海外製COFDM送信機は、日本の電波法ではそのまま使用できません(ICLG – Drone Regulations in Japan)。
アマチュア無線ではなく、「業務用無線局(第三級陸上特殊無線技士以上)」としての開局が必要です。JUTM(日本無人機運行管理コンソーシアム)への加入と運用調整も求められます。
DJI O4 Air Unitは現時点で技適未取得のケースが多いため、技適取得済みの「DJI FPV System(Air Unit + Goggles V1)」や、日本の電波法に適合した業務用VTX(HN10Tなど)を使った構成に置き換える必要があります。
海外のプロパイロットを日本に招く場合、日本の有資格者(第三級陸上特殊無線技士以上)を「主任無線従事者」として選任・監督させることで、無資格の海外パイロットでも特例的に操縦が可能になります。

ハードルB:航空法(目視外飛行・イベント上空の問題)
FPVはゴーグルを装着するため「目視外飛行」に該当し、観客がいる場所では「イベント上空」にも該当します(EASA – FPV Drone Regulations)。
解決策:
- 国土交通省への飛行許可承認申請: 包括申請・個別申請が必須。イベント上空の飛行は審査が厳しいため、プロペラガードの装着、係留装置、立入禁止区画の設定など、ミラノ大会同様の厳格な安全対策を提示する必要があります。
- 補助者の配置: ミラノの「スポッター」と同じ役割。日本の航空法でも目視外飛行には補助者の配置が義務付けられています。
4. 日本で実現するために必要な「3つの準備」
上記を踏まえると、日本でFPVドローン撮影を実現するために必要なのは、以下の3つです。
ミラノと同等の「250g以下の軽量・高性能機体」を、日本の電波法に適合したパーツで組み上げる。自作ドローンの高度な知識と経験が必須です。
パイロット・補助者(スポッター)・無線の有資格者をチームとして編成する。FPV撮影は「チーム競技」であり、個人技では成立しません。
JUTM加入、無線局開局(1〜2ヶ月)、航空局への飛行許可申請(2週間〜1ヶ月)をすべてクリアする。
東京2020では法規制の壁が高くありましたが、現在は「リスクベース」での規制運用も議論が進んでいます(Caldwell Law – Drone Regulations Comparison)。ミラノ大会のような「軽量機体×厳格な運用管理」という世界標準の実績ができた今、日本でもスポーツ中継や施設プロモーションの新たなスタンダードとして定着する可能性は十分にあります。
Q&A:よくある質問
Q1. 主任無線従事者制度で海外パイロットを呼ぶ際の注意点は?
日本の有資格者が「主任無線従事者」として現場に常駐し、海外パイロットの無線操作を監督する必要があります。事前に総務省への届出が必要であり、また使用する周波数帯が日本国内で許可されたものであることの確認が不可欠です。ただし、日本国内にもミラノ大会レベルのスキルを持つFPVパイロットは存在するため、国内の専門家に依頼するほうが法的手続き・コストの両面で合理的なケースが多いのが実情です。
Q2. 日本で技適未取得の最新ドローンを合法的にテストする方法は?
「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」を活用する方法があります。届出をすれば最大180日間、技適未取得の無線機器を使用可能です。ただし、あくまで「実験・試験・調査」目的に限られ、商業撮影には使用できません。本番の商業撮影には、技適取得済みの機材を使用する必要があります。
Q3. 100g未満のドローンならイベント上空でも無許可で飛ばせる?
100g未満の機体は航空法の「無人航空機」の定義から外れるため、飛行許可申請は原則不要です。しかし、イベント会場など人が集まる場所では「小型無人機等飛行禁止法」や自治体の条例、施設管理者の許可が別途必要になるケースがあります。「100g未満=どこでも自由に飛ばせる」ではありません。安全管理体制の構築は機体重量に関係なく必須です。
世界標準の映像体験を、あなたの施設で
ミラノ・コルティナ2026は、FPVドローンが「実験的な技術」から「放送インフラ」へと格上げされた歴史的な大会でした。
そして、その技術は五輪の舞台だけのものではありません。ホテルのプロモーション映像、オフィスの採用動画、商業施設の空間紹介、イベントのハイライト映像──「空間を丸ごと体験させる」FPVの力は、あらゆる業種・シーンで活きます。
ただし、日本で実現するには、電波法・航空法への対応、自作機体の組み上げ、チーム体制の構築など、専門知識が欠かせません。
DRONE UNCHARTEDは、Honda、SUBARU、金沢21世紀美術館、Red Bullなどの現場で培った自作ドローン技術と映像制作の実績をもとに、法的手続きから撮影・編集までワンストップで対応しています。 依頼から最短2週間での納品も可能です。
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参照ソース一覧
ミラノ・コルティナ冬季大会(2026年)関連
- SUAS News – FPV Drones and the Winter Olympics
- NewscastStudio – FPV Drones Deliver Athlete Perspective
- Design News – FPV Drones Take Center Stage
- DroneWatch – Behind the Spectacular FPV Drone Shots
- TM Broadcast – OBS Winter Olympics AI Drones
- TM Broadcast – Drones, Games, Athlete Safety & Comfort
- The Japan Times – Drones Olympic Broadcasting
- Olympics.com – Innovative Broadcast Coverage at Milano Cortina 2026
- Front Office Sports – Drones Go Viral at Olympics
- Digital Camera World – FPV Drones Create a Buzz
- Flying Magazine – Drones Reshaping Olympic Viewing Experience
東京2020大会および日本国内の規制
- Olympics.com – Intel Drone Light Show at Tokyo 2020
- 国土交通省:空港周辺における小型無人機等の飛行禁止について
- 文部科学省:東京2020大会におけるドローン規制について
国際的な規制・技術比較
- EASA – Drone Racing and FPV Regulations
- ICLG – Drone Regulations in Japan
- Caldwell Law – Drone Regulations Japan/EU/US
高速撮影技術・その他事例

