ホテルの竣工記録映像は
どう発注する?
「竣工の映像を残したい」と決まってから、実際の発注までたどり着けないことがあります。理由はたいてい内容ではなく、誰の予算で撮るのか、いつ動けばいいのか、何を仕様として伝えればいいのかが整理されていないからです。設計・施工・運営と関係者が多いホテルでは特にそうなります。この記事では、見積を取る前に決めておくべきことを順番に並べました。
誰の予算で撮るのか
最初の、そして最大の壁がここです。ホテルの竣工記録映像は立場によって目的が違い、結果として「誰が払うのか」が宙に浮きがちです。
| 発注主体 | 主な目的 | 予算の出どころ |
|---|---|---|
| 設計事務所 | 作品記録、アワード応募、自社サイトの実績 | 設計監理費、広報費 |
| 内装・ディスプレイ会社 | 施工実績の記録、提案資料 | 工事費内の記録費、広報費 |
| ゼネコン | 竣工記録、社内報告、技術広報 | 工事費内の記録費 |
| デベロッパー | 事業記録、投資家向け資料、リリース | 開発事業費、広報費 |
| 運営会社・開業準備室 | 開業前の販促、SNS、OTA掲載 | 開業準備費、マーケティング費 |
ここで注意したいのは、同じ建物の映像でも竣工記録とプロモーションでは別の予算になることが多い点です。竣工記録は「完成状態を残す」ことが目的で、撮影のタイミングは引き渡し前の数日に限定されます。一方プロモーションは運用が始まってからでも撮れます。この2つを混ぜて1本で済ませようとすると、どちらの要件も満たせないことがあります。

人が入っていない完成状態を残したいのなら竣工記録。宿泊客やスタッフが写り、施設の使われ方を見せたいのならプロモーション。前者は引き渡し前の一発勝負、後者は開業後に撮り直せます。
いつ動き出すべきか
撮影日は工事の進捗で後ろにずれることはあっても、前には動きません。逆算して準備する必要があります。

「予算が確定してから声をかけよう」と待っているうちに養生が外れ、什器の搬入が始まってしまうパターンです。概算の相談だけなら費用はかからないので、日程の見通しだけでも早めに共有しておくのが安全です。
見積を依頼する前に決める6項目
この6つが決まっていれば、どの会社に投げても比較可能な見積が返ってきます。逆にここが曖昧だと各社バラバラの前提で見積が出てきて、比較できません。

1. 撮影する区画
ロビー、客室(何タイプか)、レストラン、大浴場、宴会場、外観。「全部」ではなく優先順位を付けます。区画数が費用に直結します。
2. 撮影日数
1日で収まるのか、2日必要か。区画が多い、照明シーンが複数ある、稼働中の時間帯を避ける必要がある場合は日数が増えます。
3. 映像の本数と尺
長尺1本なのか、SNS用の短尺も必要か。ループ再生用の無音版、縦型版が要るかどうかも先に決めておきます。
4. 静止画の要否
映像だけでよいのか、ドローン視点の静止画も必要か。必要なら解像度の指定(長辺何px以上か)も伝えます。
5. 使用範囲
自社サイトのみか、SNS、プレスリリース、営業資料、OTA掲載、展示会まで含むか。範囲によって許諾の条件が変わります。
6. 公開のタイミング
開業前の情報であれば、いつまで非公開にするのか。撮影会社側の実績掲載をどう扱うかも、ここで決めておきます。
見積書で比較すべきポイント
総額だけを並べても、中身が違えば比較になりません。次の項目が書かれているかを確認してください。書かれていない項目は、後から追加費用になりやすい部分です。
| 確認項目 | 見るべきところ |
|---|---|
| 撮影費 | 何日分か、人数は何名か、機材費が別計上になっていないか |
| 編集費 | 何本分か。尺の上限はあるか。BGMの楽曲使用料は含まれるか |
| 修正回数 | 無償で何回まで対応か。3回目以降の単価は書かれているか |
| 初稿の提出時期 | 撮影から何営業日か。急ぎの場合の特急料金はあるか |
| 納品形式 | 解像度とコーデック(4K/H.264/ProRes など)。ファイル命名規則の指定に対応するか |
| 編集前素材 | 撮影した素材そのものを受け取れるか。有償か無償か |
| データの保管期間 | 納品後いつまで保管され、再書き出しに対応してもらえるか |
| 使用許諾の範囲 | どの媒体で、いつまで使えるか。許諾書は発行されるか |
| 交通費・出張費 | どこを基点に算出するか。遠方の場合の扱い |
| 割増条件 | 深夜・早朝の割増、休日対応、延長の単価 |

特に見落とされやすいのが「編集前素材」と「保管期間」です。数年後に別の用途で使いたくなったとき、素材が残っていなければ撮り直しはできません。竣工記録という性質上、ここは必ず確認しておきたい項目です。
館内映像プランは撮影1日・編集済み映像1本+ドローン静止画で35万円から、外観空撮を含むプランは55万円からです。納品は4K(3840×2160/H.264)で、無音ループ版・縦型版を同時納品。静止画は長辺3,840px以上を標準でお渡しします。初稿は撮影から10営業日前後、修正は2回まで無償。納品データは1年間保管し、期間内の再書き出しに対応します。
館内ドローン撮影|ホテル・アリーナの竣工映像 を見る →
権利と守秘 —
一番もめやすいところ
映像の発注で後からトラブルになるのは、金額よりも権利まわりです。ホテルは関係者が多いぶん、整理しておく価値があります。
使用許諾の範囲を文書で残す
「納品されたのだから自由に使える」と思われがちですが、映像の著作権は制作者側に残るのが一般的で、発注者は使用許諾を受けて使う形になります。どの媒体で、どの期間、誰が使えるのかを許諾書として受け取っておくと、あとで営業資料に転用したい、運営会社にも渡したいといった場面で迷いません。
施主・運営会社への二次提供
設計事務所や施工会社が発注した映像を施主や運営会社にも渡したいケースは非常に多いです。これを事前に伝えておかないと、納品後に追加交渉が必要になります。発注時点で「施主にも共有する」と伝えておけば済む話です。
開業前の情報と解禁日
開業前のホテルは、内装も客室も未発表の情報です。撮影会社が自社の実績として公開してしまうと、プレスリリースより先に内装が世に出てしまいます。NDAの締結と、実績掲載の可否・解禁日の取り決めは発注の条件に含めておくべきです。
1. 使用許諾書は発行されるか
2. 施主・運営会社への二次提供が可能か
3. 撮影会社の実績掲載をいつから許可するか(非掲載という選択肢もあるか)
アワード応募を見据えるなら
設計事務所や内装会社が竣工記録を撮る動機として大きいのが、各種アワードへの応募です。日本空間デザイン賞やグッドデザイン賞をはじめ、応募要項には動画・静止画それぞれにファイル形式や尺、解像度の規定があります。

注意したいのは応募規定に合わせた書き出しが必要になる点です。納品された映像をそのまま出せるとは限りません。発注時に「アワード応募に使う可能性がある」と伝えておけば、規定に合わせた書き出しに対応してもらえます。応募直前に慌てて再編集を依頼すると、追加費用と時間がかかります。
発注でよくあるつまずき
予算の所管が決まらないまま撮影時期を逃した
設計事務所は作品記録として撮りたい、施工会社は工事費に入れる前提がない、運営会社はまだ開業準備室が立ち上がっていない。調整しているうちに引き渡しが終わり、客室に備品が入りました。
施主に渡せないことが納品後に判明した
施工会社が自社の記録用として発注。完成後に施主から「こちらでも使いたい」と要望があったものの、使用許諾の範囲が発注者のみだったため、追加の取り決めと費用が必要になりました。
社内稟議を通すための材料
「映像を撮る」という提案は効果が数字で示しにくいぶん、稟議で止まりがちです。通しやすくするための論点を挙げておきます。
- 撮り直しができない:完成状態は引き渡し前の数日しか存在せず、あとから同じ条件では撮れません。時限性のある支出だと説明できます。
- 複数部署で使える:設計の作品記録、広報のリリース素材、営業の提案資料、採用広報。1本の映像が複数の用途に回せます。
- アワード応募の素材になる:受賞すれば広報効果は撮影費を大きく上回ります。
- 静止画も同時に残る:ドローン視点の俯瞰は、地上からの写真では代替できません。
- 金額の目安が明確:館内の映像で35万円からという水準は、竣工写真の撮影費(商業施設・ホテルクラスで20万円前後から)と並べて説明しやすい金額です。
見積の読み方は FPVドローン撮影の料金相場と見積もり内訳 も参考になります。
館内ドローン撮影のご案内
設計事務所・内装・ディスプレイ会社・ゼネコン・デベロッパー向けに、竣工記録としての館内ドローン撮影を提供しています。用途の異なる約5種類のドローンを空間に合わせて使い分け、地上のカメラは一切使用しません。NDAの締結、守秘案件での非掲載対応、アワード応募規定に合わせた書き出しにも対応します。お見積りは無料です。
関連記事:竣工写真と同じ日に撮る館内ドローン映像 / アリーナ・大型商業施設の館内ドローン撮影|許可・電波・安全の実務
撮影の作例
どのような映像になるかは TOYOTA ARENA TOKYO、金沢21世紀美術館 の事例ページでご覧ください。
掲載している事例は撮影内容をご覧いただくための作例で、料金とは対応していません。費用は撮影日数・飛行する区画の数・映像の尺・照明シーンの数などによって変わるため、案件ごとに個別にお見積りします。
よくある質問
Q. 竣工記録の映像は、いつまでに相談すればいいですか。
A. 竣工の3か月前が目安です。この時点で日程が確定している必要はありません。「この時期に竣工予定」という情報だけで概算をお出しできます。直前のご相談でも日程が空いていれば対応しますが、養生が外れる時期を過ぎると撮影そのものが成立しなくなります。
Q. 開業前なので情報を出したくありません。対応できますか。
A. NDAの締結に対応しています。当社サイトへの実績掲載は事前に確認し、守秘案件は施設用途と都道府県のみの表記、または非掲載とします。開業前の情報は解禁日まで公開しません。
Q. 納品された映像を施主や運営会社にも渡せますか。
A. 渡せます。完成した映像データは施主・事業主・施設オーナーへお渡しいただけます。発注の段階で共有先を伝えていただければ、使用許諾の範囲に含めて取り決めます。
Q. 編集前の素材はもらえますか。
A. ご希望に応じて有償で納品しています(ProRes/LOG、10万円)。納品データ自体は納品から1年間当社で保管し、期間内の再書き出しに対応します。
Q. アワード応募に使いたいのですが、書き出しは対応してもらえますか。
A. 対応します。日本空間デザイン賞やグッドデザイン賞などの応募規定に合わせて、動画資料と静止画を書き出します。発注時にその予定をお伝えください。
Q. 費用はいくらですか。
A. 館内映像プランは撮影1日・編集済み映像1本+ドローン静止画で35万円から、外観空撮を含むプランは55万円からです。撮影日数、飛行する区画の数、映像の尺、照明シーンの数、深夜・早朝の割増で変わります。お見積りは無料です。
Q. 複数物件を継続して依頼する場合は。
A. 協力会社登録・単価契約の形にも対応しています。案件ごとに見積を取る手間を省けます。

















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