アリーナ・大型商業施設の館内ドローン撮影|許可・電波・安全の実務

大空間の実務

アリーナ・大型商業施設の館内ドローン撮影
許可・電波・安全の実務

アリーナや大型商業施設の館内撮影は、ホテルや小規模な店舗とは論点がまったく違います。「屋内だから航空法は関係ない」と思っていたら開口部のせいで屋外扱いだった、無線設備が多すぎて映像が乱れた、施設の承認が一つではなかった。規模が大きくなるほど、撮影そのものより手前の確認が重くなります。発注する側が何を押さえておけばいいのかを整理しました。

対象:設計事務所・ゼネコン・デベロッパー・施設運営・イベント主催者読了目安:約13分
SECTION 01

その大空間は、
本当に「屋内」か

屋内でのドローン飛行は航空法の規制対象外とされており、国土交通省への飛行許可は不要です。ただし「屋内」と認められるのは、四方と上部が囲われている空間に限られます。国土交通省の無人航空機Q&Aでも、ネット等で四方と上部が囲われていて機体が飛行範囲を逸脱しない状態であることが条件として示されています。

ここがアリーナや大型商業施設で問題になります。

館内を飛行する小型ドローン
屋根と壁で囲われ、機体が外に出るおそれのない空間かどうか。最初に確認するのはこの一点です。

屋内と判断しやすい

完全に閉じたアリーナボウル、壁と天井に囲まれたコンコース、閉じた宴会場やホール、駐車場(開口部が限定的な場合)

屋外扱いになり得る

大きな開口部のあるアトリウム、半屋外のペデストリアンデッキ、屋根付きだが側面が開いた広場、開閉式屋根が開いた状態のスタジアム

判断を先送りにしない
屋外扱いになる場合、人口集中地区(DID)での飛行、第三者上空の回避、立入管理措置、場合によっては夜間や目視外の許可・承認が必要になります。撮影当日に判明すると、その区画は飛ばせません。開口部のある空間が撮影範囲に含まれるなら、早い段階で撮影会社に伝えてください。

規制の全体像は 2026年最新のドローン規制まとめ、申請の手順は ドローン撮影の許可申請ガイド で整理しています。

SECTION 02

施設側の承認は
一つではない

航空法の話が片付いても、実務でより時間がかかるのは施設側の承認です。大型施設では決裁に関わる主体が複数に分かれています。

館内撮影に使うFPV機体と送信機
施設に出す資料には、使う機体の大きさ・重量・プロペラガードの有無まで書いておくと、警備や運営側の確認が早く進みます。
承認の相手確認されること
施設オーナー・デベロッパー撮影目的、映像の使用範囲、公開時期
運営会社・指定管理者営業への影響、使用する区画と時間帯
施設管理(設備・警備)入退館の手順、鍵と動線、照明と空調の操作
テナント・出店者店舗区画が映り込む場合の可否
消防・防災担当避難動線の確保、火気や発熱物の扱い、バッテリーの保管
興行主・イベント主催者設営期間中に撮る場合の作業調整

実務でいちばん多い遅れは「誰が決裁者か分からない」ことです。設計事務所が施工会社に聞き、施工会社が運営会社に聞き、運営会社がオーナーに確認する、という伝言の連鎖が起きると2〜3週間はすぐに過ぎます。最初に決裁ルートを一本化しておくだけで、撮影日の確保がずいぶん楽になります。

SECTION 03

電波 —
アリーナで最も見落とされる論点

FPVドローンは、機体のカメラ映像を操縦者のゴーグルへ無線で送りながら飛ばします。つまり操縦用の電波と映像伝送の電波が常時出ています。アリーナや大型商業施設は、この電波にとって国内でもかなり厳しい環境です。

ゴーグルを装着してFPVドローンを操縦する様子
FPVは機体のカメラ映像をゴーグルへ無線で送りながら操縦します。映像が乱れると一瞬視界を失うため、電波環境は安全に直結します。

混信のリスク

大規模施設には、館内Wi-Fiのアクセスポイント、業務用無線、ワイヤレスマイクとインカム、中継車や放送設備、デジタルサイネージ、来場者のスマートフォンが密集します。映像伝送が乱れると、操縦者は一瞬視界を失います。安全に直結する問題です。

業務で飛ばすための電波の要件

ここは発注する側にも知っておいてほしい点です。総務省の案内では、ドローンの映像伝送に使える帯域と要件が次のように整理されています。

帯域無線局免許必要な資格業務利用
2.4GHz帯必要(携帯局)第三級陸上特殊無線技士以上可
5.7GHz帯必要(携帯局)第三級陸上特殊無線技士以上可
アマチュア無線開局申請が必要第四級アマチュア無線技士以上不可
アマチュア無線は業務に使えません
総務省は「アマチュア無線を使用したドローンを利益を目的とした仕事などの業務に利用することはできません」と明記しています。趣味のFPVで一般的な構成のまま業務撮影を請け負っている場合、電波法上の問題が生じます。屋内であっても電波法は適用されます。

発注する側として確認しておきたいのは次の2点です。

  • 撮影会社が第三級陸上特殊無線技士以上の資格者を配置しているか
  • 使用する映像伝送と操縦用の電波が、業務で適法に使用できる構成になっているか

DRONE UNCHARTED では、代表・操縦者の小林が第三級陸上特殊無線技士を保有し、屋内でも適法に使用できる構成で運用しています。構成の詳細は取引書類一式に記載しています。

SECTION 04

安全管理と立入管理措置

大空間は飛行の自由度が高い反面、天井高があるぶん落下時のエネルギーも大きくなります。安全対策は「何をするか」より「どう担保されているか」を確認してください。

プロペラガードとカメラを搭載したFPVドローン
館内で使う機体はプロペラガードを装着した構成です。接触した場合の被害を抑えます。
  • 立入管理措置:飛行区画に第三者が立ち入らない状態をつくります。コーン、ロープ、誘導員の配置、入口の一時封鎖など、施設側と事前に決めておく部分です。
  • プロペラガード:館内撮影では機体側の基本装備です。接触した場合の被害を抑えます。
  • 吊り物・設備の確認:アリーナは音響、照明、スコアボード、バトンなどの吊り物が多く、ワイヤーは映像で視認しにくい対象です。飛行させない範囲として事前に押さえます。
  • 保険:賠償責任保険の加入状況と補償範囲を確認します。施設側から提出を求められることもあります。
  • バッテリーの取り扱い:保管場所と充電場所を施設側と決めておきます。消防担当が気にする項目です。
SECTION 05

稼働中の施設を
どの時間帯で撮るか

開業前であれば日中に撮れますが、すでに稼働している施設では時間帯の選択が費用と内容の両方を左右します。

時間帯メリット注意点
開業前・引き渡し前人がいない完成状態。自由度が最も高い期間が数日しかない。工事の進捗に左右される
開館前の早朝清掃後で館内がきれい。来館者がいない作業時間が短い。設備担当の立ち会いが必要
閉館後の夜間十分な作業時間を確保しやすい深夜・早朝(22時〜翌6時)は割増になることが多い
イベント設営期間中設営の様子も記録できる他業者との作業調整が必須。動線が塞がりやすい
SECTION 06

大空間だから撮れる画

手続きの話が続いたので、撮れるものの話もしておきます。アリーナや大型商業施設は、ドローンの特性が最も活きる空間です。

家具の間を低く抜けていく館内のFPVカット
低い位置から入って構造物や家具の間を抜け、そのまま上へ抜ける。大空間では、この動きが一本で成立します。

最下階から天井まで一本で

床から見上げたときの体積を、途切れずに記録できます。写真では見上げと見下ろしを別カットで撮るしかなく、その間が抜け落ちます。

エントランスから客席まで連続で

来場者がたどる動線をそのまま一本の映像にできます。空間のつながりが伝わります。

コンコースの回遊

曲面に沿って進みながら、店舗区画やサインの連なりを見せられます。

外観から館内へ

外観の空撮からエントランスを抜けて館内へ、カットを割らずにつなぐ構成も可能です。

用途の異なる約5種類のドローンを空間に合わせて使い分けており、地上のカメラは使用しません。詳しくは 館内ドローン撮影のサービスページ をご覧ください。

SECTION 07

発注前チェックリスト

  • 撮影範囲に、開口部のある空間(アトリウム・半屋外)が含まれるか確認した
  • 施設側の決裁ルートと決裁者を特定し、窓口を一本化した
  • テナントや出店者の区画が映り込む場合の可否を確認した
  • 消防・防災担当への事前共有が必要かを確認した
  • 撮影会社の無線資格(第三級陸上特殊無線技士以上)を確認した
  • 賠償責任保険の加入状況と補償範囲を確認した
  • 立入管理措置の方法を施設側と決めた
  • 撮影時間帯と、深夜・早朝の割増の有無を確認した
  • 映像の使用範囲と公開時期を取り決めた
SERVICE

館内ドローン撮影のご案内

設計事務所・内装・ディスプレイ会社・ゼネコン・デベロッパー向けに、竣工記録としての館内ドローン撮影を提供しています。アリーナや大型商業施設のような大空間も、施設規定の確認から立入管理措置の設計まで含めて対応します。お見積りは無料です。

館内ドローン撮影|ホテル・アリーナの竣工映像 を見る

関連記事:竣工写真と同じ日に撮る館内ドローン映像 / ホテルの竣工記録映像はどう発注する?

撮影の作例

どのような映像になるかは TOYOTA ARENA TOKYO、金沢21世紀美術館 の事例ページでご覧ください。

掲載している事例は撮影内容をご覧いただくための作例で、料金とは対応していません。費用は撮影日数・飛行する区画の数・映像の尺・照明シーンの数などによって変わるため、案件ごとに個別にお見積りします。

FAQ

よくある質問

Q. アリーナの中なら航空法の許可は不要ですか。
A. 四方と上部が囲われた空間であれば、屋内として航空法の規制対象外になります。ただし開閉式屋根が開いている、側面が大きく開口しているといった場合は屋外扱いになり得ます。撮影範囲にそうした空間が含まれるかを事前に確認してください。

Q. 屋内なら電波法も関係ありませんか。
A. 関係あります。屋内・屋外を問わず電波法は適用されます。業務としての撮影では、映像伝送と操縦用の電波がいずれも業務で適法に使用できる構成である必要があり、第三級陸上特殊無線技士以上の資格が求められます。趣味で一般的なアマチュア無線の構成は、営利目的の業務には使用できません。

Q. 営業中の施設でも撮影できますか。
A. 対応しています。開館前の早朝、閉館後の夜間など、来館者がいない時間帯で撮影します。深夜・早朝(22時〜翌6時)は割増になることがあります。

Q. 吊り物の多いアリーナでも飛ばせますか。
A. 飛ばせます。音響や照明のバトン、ワイヤーなどは映像で視認しにくいため、当日その場で飛行させない範囲を見極めたうえで撮影します。十分な距離が取れない箇所は、より小型の機体に切り替えるか撮影範囲から外します。

Q. 施設側に提出する書類はありますか。
A. 施設によって異なりますが、飛行計画、保険の加入証明、操縦者の資格証明、機体情報などを求められることがあります。必要な書類は取引書類一式としてご用意します。

Q. テナントが入っている商業施設でも撮影できますか。
A. 可能です。ただしテナント区画が映り込む場合は、施設側を通じた確認が必要になることがあります。撮影範囲を決める段階でご相談ください。

小林 佑誠

この記事を書いた人

小林 佑誠DRONE UNCHARTED 代表 / FPVパイロット

DRONE UNCHARTED 代表。2017年に映像制作の技術を学び、映像制作会社で4年半のキャリアを積んだのち2022年に独立。2023年から自作FPVドローンの設計・製作に取り組み、2024年にDRONE UNCHARTEDを設立しました。機体を自分で作る立場から、海上・屋内・夜間といった難易度の高い環境での撮影や、照明を搭載した特殊機での撮影を得意としています。Honda、SUBARU、Red Bull、南海電鉄、金沢21世紀美術館、東京都、NMB48などの撮影を担当。東京を拠点に全国で活動しています。

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